あなたとわたしで紡ぐ愛

「ねぇ、翠ちゃん……」

「はい?」

「………ううん、何でもないっ」

「?」

「そうそうっ、そういえばね、……」


そんな風にいつもみたいに昔話から近況報告まで他愛のない話をしている中で、あの日は佐和さんが何かを言いかけては止める、という場面が何度かあって。

いつも歯切れの良い彼女にしては珍しいなと思いながらも、その時の私は特に気にはしていなかった。


でもその翌日。


定時で仕事を終えた私が会社を出てすぐの大通りで信号待ちをしていた時。

横断歩道の向こう側に、渓くんを見つけた。

渓くんと私の会社は最寄駅が一緒。だから朝は大体一緒に通勤していて、帰りもたまに駅や駅までの道でばったり会う時がある。

この日も偶然会えた嬉しさで、自然と顔が綻んだ。


"信号が青に変わったら後ろから駆け寄ってびっくりさせてやろう"


ニヤけてしまう顔を抑えながら、そんなイタズラ心で渓くんを見失わないように目で追っていた私は、だから気づいてしまったのだ、渓くんが1人じゃないということに。


ーー渓くんの隣にいたのは、佐和さんだった。


同じ会社だし同期で昔から仲も良いし、だから一緒にいたって何の不思議もない。


だけど仲睦まじそうに笑い合う2人が入っていったのは、横断歩道を渡ってすぐの角にある大きなジュエリーショップで。

どくん、と、心臓が嫌な跳ね方をした。
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