あなたとわたしで紡ぐ愛
「あっ、園田さんお疲れ様です!」
あの日のことを思い出していたら、一際明るい声が私の名前を呼んで、現実に引き戻された。
「大谷くん、お疲れ様」
「大谷よ。ちなみに私もいるんだけど?」
「あっ、清水さんもお疲れ様です!園田さんの隣、いいですか⁉︎」
「うん、空いてるよ」
「やった!」
弾けるような笑顔を見せてトレイをテーブルに置き、私の隣へ腰を下ろした彼に沙織は苦笑いをこぼす。
大谷くんは今年入社の営業マン。子犬系の整った顔立ちに人懐っこい性格の持ち主の彼は、先輩からも可愛がられていて営業の才もあるらしい。
総務部の私と営業部の彼は、普通なら滅多に接点はないのだけど、1ヶ月前、営業帰りの彼が突然具合悪そうにしゃがみ込んだ所にたまたま出くわして。
熱中症になりかけていた彼を少しだけ介抱してからというものなぜか懐かれている。
今では仕事終わりにばったり会えば、駅まで一緒に帰ったりするくらいには親しくなっている。
「大谷は外回り帰り?」
いただきます、と手を合わせる大谷くんに沙織が聞く。彼の今日のランチは大盛りのカツカレーらしい。