あなたとわたしで紡ぐ愛
『あいつから、"万が一自分に何かあったらお前を頼む"と言われていた。だからお前、オレんとこ来い』
……兄はそんな縁起でもないことを、一体いつの間に頼んでいたのだろうか。でも、渓くんがそれをいつ、どんなシチュエーションで言われたのかは分からないけれど、それは絶対本気で言ったんじゃないと思う。
そんな口約束で、渓くんがこんな何の血の繋がりもない私を背負い込むことはない。
私は強張った顔に何とか笑みを貼り付けた。
『……渓くん、それ、お兄ちゃん本気で言ったんじゃないと思いますよ。それに大丈夫です。渓くんと初めて会った時はまだランドセルを背負っていた私ももう17ですよ?子供じゃないです。バイトもしてますし兄が遺してくれたお金もあります。1人でも、十分生きていけますから』
『……馬鹿、そんな顔で大丈夫って言われても全然説得力ねーわ。それにランドセル背負ってなくたって、成人してねぇ時点でお前はまだ立派な子供だ。いいから、子供は子供らしく甘えとけ』
困ったように眉間に皺を寄せ、全てお見通しだと言わんばかりにくしゃくしゃと私の頭をかき混ぜる彼に、私はもうそれ以上強がることは出来なかった。
彼の優しさの滲む"馬鹿"と、そのちょっと雑に私を撫でる大きな手に、私は昔から弱い。