あなたとわたしで紡ぐ愛
結局あれからようやく覚醒した渓くんは、くあ、とあくびをかました後"おめでとう"と、私の頭を無造作にクシャクシャと乱した。
"ありがとうございます。でもさっきも言ってもらいました"とカマをかけてみれば、"ん?そうだっけ?"なんてきょとんとするから、やっぱりあれは完全に寝ぼけていたんだな、と苦笑する。
そうしていつものように居間で朝の情報番組を見ながら食卓を囲み、一緒に家を出る。
入道雲の浮かぶ青い空が眩しい。
「翠。今日ルナアーラホテルのロビーに18時な」
「はい」
渓くんは、毎年私の誕生日にはいつもリクエストを聞いてくれる。
どこに行きたいかとか、何を食べたいかとか。
でも私はいつも決まってこう答えていた。
"デリバリーを頼んで縁側でパーティーがしたいです"と。
渓くんは"欲がねぇなぁ"、と言って笑うけれど、大好きな人に大好きな縁側で誕生日を祝ってもらう。
私にとっては、これが1番の贅沢だった。