あなたとわたしで紡ぐ愛
6、惜別
「おお……!すごい、このお肉、口の中で溶けましたよ……⁉︎」
「くくっ、お前はさっきからいちいち感動し過ぎだ馬鹿」
ルナアーラホテルの33階。
眼下に広がる夜景を眺めながらいただくコース料理に大げさに感動している私を、さっきから渓くんは面白そうに見つめている。
「だって……!」
「こんなに喜ぶなら、もっと早くに連れて来てやったら良かったな」
馬鹿、と言われて反論しようとした私の声に重ねられた思いの外優しい声。
それと同時に柔らかく解れるその表情に、私は、ぐ、と詰まってしまった。
料理の見た目にも、味にも感動しているのは本当。
だけどそれが大げさになってしまうのは、もうすぐ訪れる別れから、少しでも気を逸らしたいから。
覚悟を決めて来たはずなのに、往生際の悪い自分にほとほと呆れてしまう。
私がこんな風にはしゃいでいるのは、特別な日の、特別な空間に浮かれているからだと、そう思ってくれたらいい。
「お前酒弱いんだから、そのシャンパン飲み終わったらあとはジュースにしとけよ?」
「……分かってますー!」
美味しくて楽しくて、とても幸せな時間だった。
いつまでも、この時間が続けばいいのにーー。