あなたとわたしで紡ぐ愛
ーーだけど。
残すはデザートのみ、というところでその時は訪れた。
「ーーあー、翠。お前に、大事な話がある」
先程までポンポン軽口を叩いていた渓くんが、急に真面目な顔をして私から目線を逸らし、襟足をくしゃりと掻く。
何か言いにくいことを言い出す時の、渓くんの癖。
……ああ、ついに、来てしまった。
これで本当におしまい。タイムリミットだーー。
でも、渓くんには言わせない。
きっと優しい渓くんは、自分から私の手を離すことに、罪悪感を感じてしまうだろうから。
だから、言わせたくない。
私は1つ、深呼吸をする。
「……渓くん。その前に、私の話を聞いてもらえませんか?」
「……翠の話?」
「はい」
渓くんが、一瞬怪訝な顔になる。
だけど、私の真剣な表情から何かを察したらしい渓くんは、
「……ん、分かった。何?」
居住まいを正して聞く姿勢を見せてくれる。
だから、もう1つ深呼吸をした私は、真っ直ぐに渓くんを見つめて言った。
「渓くん。お兄ちゃんが亡くなってから今日までの6年間、ずっと私の面倒を見てくれてありがとうございました」
「……んだよ急に」
渓くんの瞳が、揺らぐ。
「……まぁ6年のうちの半分以上は、私が渓くんの面倒を見てるようなものでしたけどね」
「それは否定出来ねーな」
戯けてそう付け足せば、渓くんも微かに笑う。
どうか、どうかこのままちゃんと伝えられますように……。声が、震えませんように……。