あなたとわたしで紡ぐ愛
ホテルを一歩出た途端、頬を伝った涙。
ああ、この顔、渓くんに見られなくて良かった。でもあんな風に飛び出して来ちゃって、きっと渓くん変に思ってるよね……。
それにせっかくお祝いしてくれたのに、最後のデザートを食べないで出て来ちゃって、申し訳ないことしちゃったなぁ……。
そんな取り止めのないことを思いながら流れる涙を拭う。
夜になってもまだ蒸し暑さを孕んだ風が濡れた頬を撫でていくのを感じて、ああ、夏はやっぱり私にとって別れの季節なんだなぁ……、と自嘲気味の笑みがこぼれた。
「……園田さん⁉︎」
その時突然名前を呼ばれ、俯いていた顔を上げる。
「大谷、くん?」
私に駆け寄ってきたのは、大谷くんだった。
「やっぱり園田さんだ!こんなところでどうしたんですか⁉︎」
「大谷くんこそ、どうしてここに……?」
「オレはさっきまで営業部の先輩たちと飲んでて。2軒目に女の子のいるお店に行くっていうから適当に理由つけて先輩たち撒いて来たところです……、って園田さん、泣いて、るんですか……?」
私の顔を覗き込んだ大谷くんが、ハッとする。