あなたとわたしで紡ぐ愛
その頃のオレは、綺麗で可愛いと評判の会社や取引先の女からいくら声をかけられても全く心惹かれることはなくて。
たまに気まぐれに誘いに乗ってみても、いつだって思い浮かぶのは翠のことばかり。
だからあまり会わなくなってからも蒼からそれとなく翠の情報を聞き出していたオレに、
『何かー、翠ね、今日デートだって言ってた』
『は?』
『デート♪』
あの日、あいつが満面の笑みで伝えて来た情報は、予想外のものだった。
……彼氏なんていつの間に出来たんだ?聞いてねーぞ?
ーー結局、その後デートの相手は翠の女友達だったと言うことが判明した訳だが、オレはその時湧いて来た自分の感情で、奇しくも気がついてしまった。
自分が翠を気にかけているのは、"妹"としてではないということに。
だがオレは20後半のオッサンで、翠はまだ女子高生。普通に考えて、それはヤバい。
だからこの気持ちには、気づかないふりをした。
でもそんな時だった。蒼が交通事故で亡くなったのは。本当に、突然のことだった。
嘘だろ?あいつを置いて逝くつもりはないと、とんでもねぇシスコンっぷりを発揮していたのはついこの間のことなのにーーー。