あなたとわたしで紡ぐ愛

両親に先立たれている翠を思えばその気持ちも分からなくはないが、そのシスコンっぷりにオレが引いていれば、


『あはは!……まぁだからさ、万が一の時は頼むよ、渓』


急に真面目な顔をして言うもんだから、オレは面食らってしまった。

人の命に絶対はない。今日元気だった人間が明日も元気だなんて保証はどこにもない。

蒼はそのことを、身を持って知っているから。

だからそうやってオレに、保険を掛けたかったのだろう。


『……言ってることが無茶苦茶だ、馬鹿。それにオレより仁藤がいるじゃねーか。本当の姉妹みたいだぞ?あの2人』

『ううん、これは渓にしか頼めないの』

『何でだよ』

『だからもしもの時は、うちの仏壇の引き出しの、裏を見てみてね』

『聞けよ人の話を』

『僕は賛成だから』

『あ?何の話だ』


こいつはたまに、何の脈絡もなく訳のわからないことを言う。


『だから任せた!』

『……お前、何企んでやがる?』

『人聞き悪いなぁ。全ては愛だよ、愛』

『うわ、きも』

『こら、きも、とか言わない!』

『ま、そうやって言ってる奴ほどしぶとく長生きするもんだから安心しろ』

『そうだね。僕もそう思うよーーーー』


そう言って、笑っていたくせにーーーー。


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