あなたとわたしで紡ぐ愛
そうやって翠と暮らすようになってから2年が過ぎ、3年が過ぎ。
その頃には翠と「お帰り」「ただいま」を言い合うこの生活がすっかり当たり前になっていて。
オレは翠を。この生活を。
失うのが怖くなった。
オレが気持ちを伝えて翠に受け入れてもらえずにこの生活に終わりが来るくらいなら、家族同然のこのままの関係でずっといられる方がマシだと、そう思ってしまったのだ。
毎年2人で近所の神社に初詣に行くたびに、"ずっとこの生活が続くように"とオレが願掛けしていたことを、翠は知らない。
だがそんなオレに転機が訪れたのは、1ヶ月程前。
たまたま定時で上がれた日、駅まで男と仲良さそうに歩く翠を、仁藤と一緒に目撃してしまう。
オレと仁藤の知る限り、今まで翠に彼氏がいたことはない。男の影も感じられなかった。
だからこそ、オレはどこかで油断していたんだ。