あなたとわたしで紡ぐ愛
8、蜜月

手を引かれるがままに足を踏み入れた、ラグジュアリーなホテルの一室。

部屋の豪華さだとか窓一面に広がる夜景だとかに感動する間もなく、


「そこ座れ」


顰めっ面の渓くんに促されるまま、私はおずおずと靴を脱いでふかふかのベッドに上がり、正座した。

驚きの展開の連続に、涙はとっくに止まっている。


「……何でベッドの上に正座だよ」


ベッドの横で一連の私の動きを見守っていた渓くんが、眉根を寄せた。


「……だって、これからお説教なんでしょう?」

「……ったく、お前には敵わねーな、本当」


ネクタイを緩めながら顰めっ面を解し、ふ、と笑って私の頭をくしゃくしゃと乱す。


「説教はもういい。……翠、さっきお前に告白してた男は誰だ?」

「あ、あれは会社の後輩で……」

「付き合う気は?」

「なっ、ないよっ⁉︎」

「……はぁ……」

「えっ……⁉︎ちょっ、渓くん……⁉︎」


私の答えに安堵の滲んだようなため息を漏らした渓くんは、ベッドの縁に片膝を乗せ、正座している私を(おもむろ)にぎゅっと抱き締めた。

身体が少し沈み、わずかにベッドのスプリングが軋んだ。
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