あなたとわたしで紡ぐ愛
「最高。ーー顔洗って来るわ」
そう言ってくるっと私に背を向け台所を出て行こうとしていた渓くんが、徐に振り返る。
「あ、翠。オレ今日帰り遅くなる」
「……了解です」
「戸締まりしっかりな」
「分かってます」
「縁側で腹出したまま眠りこけんなよ?」
「もうっ。子供扱いしないで下さいっ。分かってますって!」
「ははっ、素直にハイって言えねーのかお前は。……それと翠、」
私の可愛くない返答に笑った彼が、不意に私の頭に手を置いて腰を屈め、目線を合わせて来る。
さっきとは違う、真剣な色が瞳に宿っていた。
「ーー来週のお前の誕生日、今年もちゃんと空けとけよ。
ーーその時、……あー、お前に話したいことが、ある」
空いている方の手で自分の襟足をくしゃ、と乱した渓くんは、私からすっ、と視線を外してそう付け加える。
私がこくりと頷くと、彼はもう一度私の髪をくしゃりと乱してから、今度こそ台所を出て行った。