オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
「先に座って。少し待っててくれる?」

そういうと、未央はすぐに、紙コップにコーヒーを淹れて戻ってきた。

「有難う御座います」

未央が、目の前のコーヒーを眺めながら、小さくため息をついた。

「ごめんなさいね、時間取らせて」

先日の病室で会った時とは、イメージが違う。あの時の自信に満ち溢れた未央と違って、今日は、どこか不安げだ。

「あの、春樹、いつ有給取るって未央さんに連絡あったんですか?」

以前、春樹から、仕事のスケジュールやシフト管理は秘書の未央が、してくれていると話していたからだ。

「昨日の真夜中よ、珍しく電話があって、
結婚式のことでちょっと打ち合わせがあるから、休ませて欲しいって」

私が眠ってる間に、春樹は、未央に連絡をして急遽有給を取ったということだ。

「……先に寝てしまったので、全然知らなくて」

スマホをもう一度確認してみる。送ったラインは未読のままだ。

「春樹の社用車がないのよ、朝乗って行ったんだと思う」

「春樹が帰ってきたら、わかりますか?ドライブレコーダーとかで」

未央は首を振った。

「他の上役と違って、社長と、春樹、冬馬の車のドライブレコーダーは、データとして会社には転送されない仕組みなの。……だから、車を使い終わった後に履歴を消去してしまえば、春樹がどこに行ったのかわからない。……ねぇ、本当に心当たりないの?それか、あなたにサプライズで結婚式の準備してるとか?」

それは考えられない。今日に限っては。

「私、朝、急に仕事が休みになったんです……春樹は、式場の雑誌だけ私に渡して、出勤して行ったので……結婚式の会場探しとかは……違うと思います」

結婚指輪も一緒に見に行こうと話していた。 

春樹はいつも、私にちゃんと意見を聞いてくれるから。
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