オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
「……そう、あとから私も連絡してみるわ。……それからもう一つ、さっき冬馬にも話したんだけど」
未央が、口籠る。
「……何ですか?」
「貴方は、知ってるんじゃない?……春樹の頭痛のこと」
「え?……」
未央の切長の瞳が、大きく見開かれた。
「知らないの?……てっきり、それを冬馬に相談に来たのかと思って」
「……頭痛?春樹……頭痛起こしてるんですか?」
小さい頃から、熱を出すのは、私、怪我をするのは冬馬だ。春樹は身体が丈夫で、風邪も滅多にひかない。
「その様子じゃ明香さんの前では、頭痛おこしてないのね……私が見たのも一度だけ、でもただの頭痛に見えなかったから。……春樹が毎年受けてる人間ドックの検査結果、調べたいけど、さすがにね、私は家族じゃないから」
「……私がお願いしたら、取り寄せてもらえますか?」
未央が困惑した顔をした。
「そうしてあげたいとこだけど、婚約者とはいえ、結局患者本人か、ご家族じゃないと」
冬馬は、認知されているが、籍が入ってないから取り寄せられない。春樹の父、松原幸之助なら可能だろうが、幸之助は私たちが小さい頃から、春樹にさえも無関心だ。その癖、手元に置きたがる。
「わかりました……春樹が帰ってきたら、聞いてみます」
未央と別れて、松原工業のエントランスへと向かう。
春樹は、いつも私のことばかり心配する。春樹はもしかしたら、家でも頭痛を起こしていたのだろうか?
私に心配を、かけたくなくて黙っているのだろうか?
松原工業のエントランスを出るとすぐに雪が降り出した。
私は鞄からブルーのマフラーを、首に巻いて傘を広げた。曇り空から落ちてくる雪の粒が、冬馬と私の涙がみたいに見えた。
冬馬はお弁当食べただろうか。私は小さく首を振った。もう考えるのはやめよう。
冬馬は、『お兄ちゃん』なのだから。
それに私がいま、考えなければいけないのは、春樹のことだけだ。
ポケットからスマホを取り出して再度かけるが応答はない。春樹に送ったラインも既読になっていない。
なんだか、嫌な予感がした。私は震える掌で傘をぎゅっと握りしめると、家へと足を早めた。
未央が、口籠る。
「……何ですか?」
「貴方は、知ってるんじゃない?……春樹の頭痛のこと」
「え?……」
未央の切長の瞳が、大きく見開かれた。
「知らないの?……てっきり、それを冬馬に相談に来たのかと思って」
「……頭痛?春樹……頭痛起こしてるんですか?」
小さい頃から、熱を出すのは、私、怪我をするのは冬馬だ。春樹は身体が丈夫で、風邪も滅多にひかない。
「その様子じゃ明香さんの前では、頭痛おこしてないのね……私が見たのも一度だけ、でもただの頭痛に見えなかったから。……春樹が毎年受けてる人間ドックの検査結果、調べたいけど、さすがにね、私は家族じゃないから」
「……私がお願いしたら、取り寄せてもらえますか?」
未央が困惑した顔をした。
「そうしてあげたいとこだけど、婚約者とはいえ、結局患者本人か、ご家族じゃないと」
冬馬は、認知されているが、籍が入ってないから取り寄せられない。春樹の父、松原幸之助なら可能だろうが、幸之助は私たちが小さい頃から、春樹にさえも無関心だ。その癖、手元に置きたがる。
「わかりました……春樹が帰ってきたら、聞いてみます」
未央と別れて、松原工業のエントランスへと向かう。
春樹は、いつも私のことばかり心配する。春樹はもしかしたら、家でも頭痛を起こしていたのだろうか?
私に心配を、かけたくなくて黙っているのだろうか?
松原工業のエントランスを出るとすぐに雪が降り出した。
私は鞄からブルーのマフラーを、首に巻いて傘を広げた。曇り空から落ちてくる雪の粒が、冬馬と私の涙がみたいに見えた。
冬馬はお弁当食べただろうか。私は小さく首を振った。もう考えるのはやめよう。
冬馬は、『お兄ちゃん』なのだから。
それに私がいま、考えなければいけないのは、春樹のことだけだ。
ポケットからスマホを取り出して再度かけるが応答はない。春樹に送ったラインも既読になっていない。
なんだか、嫌な予感がした。私は震える掌で傘をぎゅっと握りしめると、家へと足を早めた。