オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
私は、自宅に着くと、もう一度春樹に電話したが、繋がらなかった。
気を紛らわすように、家事や掃除の合間にラインを見るが、結局既読にはならなかった。

時計を見れば、夜の9時を回っている。春樹はまだ帰ってこない。何かあったんじゃないだろうか?

不安で堪らなくなってくる。

夕飯のコロッケとサラダを盛り付けてから、ラップをかけると、心を落ち着かせようとコーヒーを片手にダイニングテーブルに座った。

『ねぇ……本当に心当たりないの?』

未央の言葉をふと思い出す。

そう言えば、春樹は朝、パソコンを覗き込みながら、視線が止まった瞬間があった。

私は、春樹の部屋への階段を駆け上がっていく。春樹が居ないのに、勝手に春樹の部屋に入るのは初めてかもしれない。

それでも、春樹がどうして、嘘をついてまで、どこへ行っているのか気になった。その答えがパソコンにあるんじゃないか?そう思った。

少しだけ震える指先で、パソコンの電源を入れる。パスワードは、確か私の誕生日だった筈だ。

間違えないように入力していく。こんなことしたらダメなのに、それでも頭で考えるより先に体が動いていた。

違うパスワードだったらいいと思いながらも、自分の誕生日を入力すれば、あっけなくパソコンのロックは解除される。

鼓動は、どんどん早くなって、罪悪感で、呼吸が苦しくなりそうだ。

私は震える掌で、マウスを握ると、メールを開いた。

『ーーーー調査報告結果』

そのメールに釘付けになる。だって、その調査対象は……。


メールを開こうとした、その時だった。

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