オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜

俺達が車に乗り込み、車が見えなくなるまで手を振っていた山下を振り返りながら、明香が、涙を拭った。  

明香を連れてきて良かった。小さな頃から、親を知らずに育った明香が、どれほど親に憧れていたのか、口には出さないけれど、生きているならば、明香がずっと、父親に会いたいと思っていたのを、知っていたから。

「何だろう、また会えるのに、もう会えない気がして悲しくなっちゃった……」 

「また連れてきてやるから……いや、春樹に連れてきてもらえ」 

明香が、俺を見ながら黙り込んだ。

「春樹は、お前を想って嘘を()いたんだよ。禁忌の子だったから……」

明香は、何も言わない。俺も、言えない。
何故、春樹が明香に嘘を吐いたのか。本当の理由は分かってるから。


ーーーー俺と明香は、兄妹じゃなかった。


その事実が、春樹を堪らなく不安にさせた。当然だ。あんなに愛してる明香に、俺が抱いた事実すら、明香の前で知らない振りをする春樹が、俺と明香が兄妹じゃないなんて、今更、言える訳がない。

どんなことがあっても、春樹は、明香を手放せないのだから。

それ程、春樹が、明香を心から愛していることを、俺は嫌という程、知っているから。
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