オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
「未央は?他の女に夢中な俺に興味なんかないだろ?」
俺のネクタイにするりと手を伸ばす。
「センスのいい組み合わせね」
「明香が選んでくれたんだ」
そのまま未央は俺の膝に手を置いた。
「今だに好きよ」
「よく言うよ、男ならいくらでも寄ってくるだろ?」
「でも、春樹よりは物足りない」
「そりゃ光栄だね」
涼しげな目元を細めると未央が耳元で囁いた。
「いつでも相手してあげるけど?」
「必要ないよ」
唇を、持ち上げた俺を眺めながら、未央がデスクに溢れた書類を指差した。
「面白くない。じゃあせいぜい今日も頑張って」
「すごい量だな、なんとか明香との約束の、時間に間に合わせなきゃだな」
明香の名前をだすと、未央は不貞腐れたような顔であっそ、とつぶやいた。
俺に背を向けると早速と、秘書室へと戻っていく。ドアノブに手をかけた未央が半身振り返った。
「あ、人間ドックの検査報告きてたからちゃんと、確認しておいてよね、健康には気をつけて時期社長さん」
「ありがとう」
俺はコーヒーを持ち上げながら笑った。