オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
お父さんの言う通り、雨雲は、すぐに黒く空を覆い隠して、空からは土砂降りの雨が降り注ぐ。

行きに通った山道は規制が、張られていた。

冬馬は、大通りへとハンドルをきった。山道が通れないなら、迂回して帰らなければならない。迂回すれば、今の時間だと、明日の朝までは戻れないだろう。

冬馬は、一言も話さなかった。私も話せない。

何か言葉にすれば、もう止められない想いが(あふ)れて、どうなるのか分かってるから。

冬馬が、大通りに出て、コンビニの駐車場に車を停めた。

「飯買ってくるから」

冬馬は、このまま迂回して帰るつもりなんだろう。私は黙って頷いた。

スマホの電源をようやく入れる。見れば、春樹からの着信が沢山入っていた。ラインを開くと、

『ごめん。帰ってきたら話そう』
『電話でてくれない?』
『明香、本当にごめん。……顔が見たい。会いたい』

お父さんの言葉が頭に浮かぶ。

『冬馬と明香がいれば、何も要らない。
必ず明香は幸せにします。心から愛してる』

ーーーー愛してる

春樹は何度そう言って、私を抱きしめてくれただろう。いつも私だけを想って、大切にしてくれて、いつだって側に居てくれた。春樹の想いにいつも甘えて、安心して、守ってもらってた。

春樹の嘘なんて、私の嘘に比べたら全然だ。

春樹の元へ帰らなければならない。こんな私をずっと愛してくれている春樹の元へ。

それなのに……心がこんなに苦しくて泣きそうになるのは、なぜだろう。

< 150 / 201 >

この作品をシェア

pagetop