オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
★ 「……ひっく……冬馬……側に、いて……」

いつだって、心は冬馬だけを求めて、冬馬だけを見つめてた。

吐き出せない思いは雪のように降り積もって、消えることなく、心の片隅に、昔作った不細工な雪だるまみたいに、ずっとずっと、歪なまま、それでも真っ白なまま、冬馬を想ってた。

ぼやけた視界を、冬馬が、指先で拭って笑う。

「泣き虫」 

「……冬馬が大好き」

「もう、明香、置いてどこにも行かないから」

そのまま、冬馬の指先が、私の左手の指先を絡めた。春樹から、もらった指輪が、薄暗い部屋で僅かに光る。もう後には戻れない。

冬馬は、私の瞳を捉えたまま、左手の親指で、私の唇に触れた。その言葉を待つように。

「……冬馬を愛してる」

涙と一緒に、ようやく吐き出した言葉は、すぐに冬馬が、拾い集めるようにして、唇ごと口づけた。

口付けは重ねるごとに、降り積もっていく雪のように深くなって、ただ、溶けて(ほど)けて、一つになりたくて。

私が、冬馬のワイシャツをボタンを外す間に、きていたワンピースは床に、はらりと落ちていく。冬馬は、フロントホックの、ブラジャーのホックを片手で外すと、先端にかぶりつくように熱く触れる。

「ンッ……アッ……」

そのまま冬馬は、タイツとショーツも一気に脱がせて、私の膝を割った。

その時、ぴたりと冬馬の動きが止まった。

「明香?」

私は、何も答えられない。

ドレスの試着があるから、私を抱く時、胸から太ももにかけて、春樹は、沢山赤い痕をつける。

自分から離れないように、私がどこにもいかないように、それは、まるで見えない赤い鎖のようだ。

「冬馬……」

私は、何度も春樹に抱かれてる。その度に快楽を感じて、春樹の優しさに何度も縋った証だ。

泣きそうな顔をしてる、私の頬に冬馬が、そっと、触れる。

「もう俺しか見んな」  

「ずっと……冬馬しか見てない」 

冬馬に、何かを言葉にする度に、涙はすぐに転がっていく。
唇で涙を掬うと、冬馬の瞳が、熱を孕んだまま、私を見下ろす。

「……優しくできないからな。声も我慢すんな。誰に何されてんのか、誰に刻みつけられてんのか、ちゃんと見てろよ」

「冬馬、私」

私が、言葉を言い終わるより先に、冬馬の唇は、たっぷり濡れた私の中心に唇を這わせていく。

「アッ……やぁ……アッ……ッ」

「力抜けよ」

容赦なく、唇を噛むように這わせながら、冬馬の指先が、私の中心に入ってきて、一瞬で、身体が浮き上がる。

「冬馬っ……ダ……メ……や……」

足先に力が入って、自分の奥から、何かが押し出されそうになる。

「いいよ……大丈夫だから」

その言葉とともに、私は大きな声と共に全身を震わせた。

冬馬は指先を抜き出すと、口に含んでから、私にキスを落とした。そして、大きく足が開かれる。冬馬は避妊具をつけてない。

「愛してる」

冬馬は、一気に奥深くまで突き刺すように私の中に入った。

「冬馬っ……」

冬馬は、そのまま、私を何度も突き上げる。何度も目の前が白くなって、もう身体は言うことをきかない。スプリングが小刻みに軋んで、息をするのもやっとだ。

縋るように、冬馬の背中に回してる両手にぎゅっと力を込める。
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