オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
「うん、綺麗……あの時と一緒だね」

初めて、オリオン座を見た時は、想いだけを唇に重ねて心に閉じ込めた。

2回目にオリオン座をみた、あの夜、初めて冬馬に抱かれて、冬馬を知った。

「今日冬馬と見た、オリオンが私は1番幸せだよ」

いつもいつも、兄妹としてオリオン座を眺めては、心に蓋をしてきたから。

「俺も……明香と見たオリオンの中で、1番幸せで、一生忘れない……」

冬馬が、毛布ごと私をぎゅうっと抱きしめた。

「もう離れたくないな……」

「離さないで」

冬馬が、体をすこし離すと、唇を落とした。

煙草の味のする、少しだけ乱暴な冬馬のキス。

冬馬は、私の頭をくしゃっと撫でると、視線を夜空に向けた。私も冬馬を見上げるようにして、同じようにオリオン座を眺めた。

オリオンは、いつだって変わらず、私たちを見下ろしている。私たちの思いを見透かすように。

綺麗に三つ星が並んでいて、私は、三つ星の右側を見て、途端に胸が苦しくなった。 

左手の薬指に、『幸せにするから』と、指輪を嵌めてくれた、あの時の春樹の笑顔が浮かんでくる。

「……泣きそうだな」

短くなった煙草を最後に吸い込んでから、火を消すと、冬馬は、そっと私を抱きしめた。

「帰ったら、春樹に話そう。俺も……一緒に行くから。……芽衣にもきちんと話すから。だから……もう泣くな。いっぱい泣いただろ」

「うん……」

涙は、冬馬の声と一緒にまた転がる。

「もう離してやんないから」
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