オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
どれほど周りを傷つけたら、罰を受けたら、俺達は赦されるんだろうか。
ふと、ベッド脇の芽衣の鞄が、目に入った。
飛び出しているのは、俺が随分前に渡した、婚姻届の入った封筒だ。中を開ければ、出されたはずの婚姻届がまだ、入っている。
「芽衣……」
俺が、仕事のついでに出しておくと言っていたのに、芽衣が出しておくと譲らなくて、預けた婚姻届だ。
芽衣に、別れ話をしようとしていた癖に、いざ、まだ籍が、入っていなかった事実に、芽衣がどんな気持ちで婚姻届を出せずに持っていたのかと思うと、堪らなくなる。
俺は、芽衣にどれほどの心の負担をかけて、見えない所で泣かせてたんだろうか。
『冬馬、いってらっしゃい』
『冬馬ーお帰りー』
いつも、いつも笑顔しか見せない芽衣の俺は何を、知ってたんだろうか。芽衣の何を見てたんだろうか。
ちゃんと見ようとしたことがあっただろうか。俺が芽衣にしてやれたことなんて、きっと何一つない。
芽衣の頬に、手を伸ばそうとして、スマホが、スラックスの中で震える。
俺は、寝室の扉をそっと閉じると、液晶を確認して、慌ててすぐにタップした。
「明香?どした?」
何だ?聞こえてくるこの音。そして、騒がしく、明香以外の複数の男の声の、やりとりが聞こえる。
「ひっく……冬……真……春樹っ……死んじゃうっ」
「え?……何言って……」
自分の鼓動だけが、勢いよく音を立てて早くなる。
「春樹がっ……ひっく……」
泣きじゃくる明香に、未央の言葉を思い出す。
未央の言ってた頭痛ーーーー。
春樹の人間ドックの検査結果を、俺は見た訳じゃない。
少しだけ痩せた春樹、俺と離した時の微妙な、違和感が、俺の心をあっという間に不安に、染めていく。
「明香っ、すぐ行くから!」
明香のスマホからは、救急車のサイレンの音が、小さく響いている。
「冬馬っ……早く来てっ」
「待ってろ!」
泣き叫ぶ、明香の声を最後に無理やりに、通話を切ると、俺は車に飛び乗った。
ふと、ベッド脇の芽衣の鞄が、目に入った。
飛び出しているのは、俺が随分前に渡した、婚姻届の入った封筒だ。中を開ければ、出されたはずの婚姻届がまだ、入っている。
「芽衣……」
俺が、仕事のついでに出しておくと言っていたのに、芽衣が出しておくと譲らなくて、預けた婚姻届だ。
芽衣に、別れ話をしようとしていた癖に、いざ、まだ籍が、入っていなかった事実に、芽衣がどんな気持ちで婚姻届を出せずに持っていたのかと思うと、堪らなくなる。
俺は、芽衣にどれほどの心の負担をかけて、見えない所で泣かせてたんだろうか。
『冬馬、いってらっしゃい』
『冬馬ーお帰りー』
いつも、いつも笑顔しか見せない芽衣の俺は何を、知ってたんだろうか。芽衣の何を見てたんだろうか。
ちゃんと見ようとしたことがあっただろうか。俺が芽衣にしてやれたことなんて、きっと何一つない。
芽衣の頬に、手を伸ばそうとして、スマホが、スラックスの中で震える。
俺は、寝室の扉をそっと閉じると、液晶を確認して、慌ててすぐにタップした。
「明香?どした?」
何だ?聞こえてくるこの音。そして、騒がしく、明香以外の複数の男の声の、やりとりが聞こえる。
「ひっく……冬……真……春樹っ……死んじゃうっ」
「え?……何言って……」
自分の鼓動だけが、勢いよく音を立てて早くなる。
「春樹がっ……ひっく……」
泣きじゃくる明香に、未央の言葉を思い出す。
未央の言ってた頭痛ーーーー。
春樹の人間ドックの検査結果を、俺は見た訳じゃない。
少しだけ痩せた春樹、俺と離した時の微妙な、違和感が、俺の心をあっという間に不安に、染めていく。
「明香っ、すぐ行くから!」
明香のスマホからは、救急車のサイレンの音が、小さく響いている。
「冬馬っ……早く来てっ」
「待ってろ!」
泣き叫ぶ、明香の声を最後に無理やりに、通話を切ると、俺は車に飛び乗った。