オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
病院に到着して、ストレッチャーに乗せられたまま、意識のない春樹は、すぐに脳のMRIとCT検査室へと連れていかれる。
「此処でお待ちください」
慌てた様子の看護師と医師が、交互に春樹の体に触れては、専門用語でやりとりしながら、検査室野扉が閉められた。
私は、身体の震えが止まらない。崩れ落ちるように検査室の前の黒い長椅子に座ると、涙が溢れてくる。
「ひっく……春樹……ふっ……ひっく」
ーーーー私のせいだ。
いつもいつも、春樹に頼って甘えてばかりで、春樹に負担ばかりかけていた。
さっき、救急隊員の方から渡された、春樹のズボンのポケットに入っていた白い袋……。
隣町の市立病院から、処方された痛み止めだった。
いつから春樹は、不安と戦ってたんだろう。きっといつも、怖くて、堪らなかったはずだ。だから、式の日取りも入籍も、伸ばし伸ばしにしていたんだろう。今ごろ気づいても、何もかも遅い。
私は、こんなにずっと春樹のそばにいて、居させて貰って春樹の何をみていたんだろう。
きっと、小さなサインは沢山あった筈なのに。
「明香っ!」
「冬馬っ……」
冬馬は、私に駆け寄ると、手に持ってたジャケットを、上着を忘れた薄着の私に掛けてから、そっと抱きしめた。