オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
「……私…寝てた?」

「疲れたんだろ、1時間くらいかな、ぐっすり寝てたから起こさなかった」

「ありがとう……」

多分眠ってる間、冬馬は、ずっと私のそばで私のことを見てくれてたんだろう。

こうやって小さな頃からずっと、私だけを見て、側に居てくれてた。私が起きあがろうとすると、冬馬が背中を支えてくれる。

「大丈夫?飯食える?」

「お腹ペコペコ……」

「持ってくるな、座ってろよ」

冬馬は、お粥をよそうと、ソファーの前のサイドテーブルにことんと2つ置いた。

白いお粥に梅干しが乗っかって、溶き卵がかけてある。優しい塩味の冬馬のお粥。
小さい頃はいつも、冬馬が、ふうふう、して食べさせてくれたのをふと思い出す。

「冬馬もお粥にしたんだ?」

「まあな、久しぶりに作ったけど、味見したら美味かったからな」

冬馬は、唇を持ち上げた。

「ふうふう、して食わしてやろうか?」

「もうっ、子供扱いしないでっ」

同じことを、考えていたことが気恥ずかしくて、思わず口を尖らせた私を見ながら、冬馬が嬉しそうに笑った。

「懐かしいな」

そう言いながら、冬馬は、左手でスプーン片手にお粥を、頬張った。私も真似して頬張る。

「美味しい」

「だろ?天才だな、俺のお粥」

冬馬と目を合わせて笑う。

いつまでも、こうして冬馬と一緒にいられたらどんなに良かっただろう。今更、どうしようもないことが、また浮かんでは消える。

空っぽになった器を、冬馬は洗うと私の隣に腰掛けた。
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