オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
「なぁ、春樹帰ってきても、そんなんじゃ家事できないだろ?俺が明日から」

「未央さんが、来てくれるから」

冬馬が、驚いた顔をしてらこちらを見た。

「あ、未央さん、一緒にロスに行くことになってて。長旅になるし、未央さん、看護師さんだし、春樹のこともよく分かってるから。私の体調とかも気にかけてくれてて」

「は?そんなんじゃ、お前が気使うだろ。大体、未央は春樹にまだ気があるしな。それより、春樹さえ良いなら……俺が明日から家に戻るから。何ならロスに、同行しても構わない」

春樹は、私と冬馬のこと、全然怒ってなんかない。それでも、今、冬馬にそのことは伝えられない。

「本当に大丈夫だから……さっき、春樹と未央さんのお兄さんとも話して、暫く落ち着くまで、未央さんにも、ロスに来てもらうことになってるし、大丈夫」 

冬馬の顔は険しい。その綺麗な薄茶色の瞳に全てを見透かされてしまいそうで。

「何隠してる?」

思わず顔に出た。冬馬は今の私の表情をきっと見逃さない。 

「……そんなの、ないから……」

「俺に嘘つけると思ってんのかよ……」

冬馬には、今は言えない。きっと冬馬は苦しむから。お医者様から言われた言葉が、私は頭に過ぎる。あとから、知ることになれば、冬馬はどう思うだろうか。本当に私はズルい。最後まで、冬馬に隠し事をするのだから。

「……一緒になれない私達は、極力会わない方がいい……から」

「さっきも言ったよな、俺のことなんかどうでもいい。本当にそれだけ?明香が、俺と会うのがキツいってこと?」

ーーーー違うよ。毎日会いたい。

毎日声が聞きたい。側に居たかった。何もかも捨てて、冬馬と二人で生きていきたかったから。

「……っ……もう一緒に……なれないから……」

「泣くなよ、泣かしたい訳じゃないから……」
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