オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
冬馬が、コワレモノに触れるように、私をそっと抱きしめた。

見上げれば、昨日と同じ冬馬のワイシャツのボタンは一つ外されていて、鎖骨には、私がつけた赤い痕が見える。

思わず指先でなぞった。冬馬は私のモノだという、しるし。ずっと、冬馬だけが欲しかった。
恋しくて堪らなかった。

冬馬の唇が、私の首筋の痕に触れる。昨日、共に見上げたオリオンを見上げた夜を確かめるように。

そのまま、ゆっくりと、冬馬の唇が、私の唇に重ねられる。涙と共に重ねられた唇は、冬馬への恋しさも、愛おしさも、切なさも、丸ごと冬馬が、攫っていってくれるようなキスだった。

「幸せ……だったの。冬馬と過ごした日々もオリオンの夜も……」

私の心の中に降り積もった冬馬へ想いは、濁りのない綺麗な結晶に変わる。冬馬に見せれないまま、きっと、砕けて涙に変わるのだろう。

「幸せにしてやるより、泣かせてばっかだった。……もっと早く兄妹じゃないって知ってたら何か変わってたのかな……」

もしかしたら、変わっていたのかも知れない。でもそれでも、最後は春樹から、私は、離れられなかったのかも知れない。

「私の幸せは、もう冬馬から沢山のもらったよ、いっつも幸せだった。側にいるだけで幸せだったのに、冬馬に恋して、愛して、……愛してもらって幸せだったの。だからもう、冬馬は……冬馬の幸せだけを大切にしてね……勝手なことばっかり言って、冬馬…ごめんね……」

「俺は……明香が、俺の幸せだったんだ。
明香さえ、笑ってくれたらそれでよかったのに、手を伸ばしたんだ。どうしても欲しかった三つ星の真ん中に……俺のこそごめん……最後まで……泣かせてばっかりだな」

とまることない涙の雫は、もうすぐ3月なのに、窓辺から空を見上げれば、また降りだした雪のように、重量に逆らえずに落ちていく。

冬馬は私の両手に手を添えると、何度も親指で、涙を掬ってくれた。

リビングの大きな窓辺からは、オリオンの三つ星がちょうど見える。私の視線を追うように、冬馬もオリオンを見上げた。
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