オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
「……ねぇ、冬馬、一つだけ約束してくれる?」

「何?」

「……冬馬が、オリオンを見上げることがあったら、その時だけ、真ん中の三つ星に愛してるって言ってくれる?」

「今、言ってやるよ」

冬馬が、強引に引き寄せて、私を抱きしめる。耳元に冬馬の吐息がかかって、一瞬で心は、冬馬だけでいっぱいになる。

「愛してる……明香を心から愛してるから……何回言えば、一緒に居れるんだろうな……何回言えば、俺の側に居てくれる?」

「……冬馬……」

冬馬の匂いも冬馬の少し高めの声も、冬馬の優しさも、愛してるの言葉も、冬馬を構成する全てを抱きしめたくて、私は自分の心臓を冬馬に押し付けるように、ぎゅっと抱きしめた。

心臓が一つになれたなら、もう寂しさも、恋しさも愛おしさも、涙さえ、一つになって、私達は永遠に側に居られるのに。

「約束して……オリオン座の三つ星の真ん中は私。……いつも冬馬の幸せを願ってるから。だから冬馬も忘れないで……私を愛してくれたこと……私が冬馬を愛したこと」

「忘れるわけないだろっ……」

ポタンと落ちてきたのは、冬馬の涙だった。

初めてみた冬馬の涙に、私はふっと笑った。

「明香?」

「冬馬の涙さえも……やっぱり誰にも渡したくないなぁって……」

私は、冬馬の頬に触れて、初めて、冬馬の涙を掬った。

「冬馬が、大好きだよ。ずっとずっと愛してる。会えなくても、姿が見えなくても、触れられなくても、愛してる……今まで……ありがとう」

ーーーーちゃんと笑えてるかな。

冬馬が心配しないように。冬馬がこんなふうに泣いたりしないように。
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