オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
「ばぁか。一生会えないみたいに言うな」

冬馬は私のほおを片手にで摘む。
『あひる』……俯きそうになる私に、いつも意地悪する冬馬。

本当は、誰よりも私を心配して、いつも側で見て、愛してくれていた冬馬。いつまでも冬馬と一緒に居たかったよ。

「……春樹と子供と幸せにな」

「冬馬も……芽衣さんと……お幸せにね」

冬馬の顔が、ゆっくり近づいてきて、私は窓辺から見えるオリオン座を眺めながら、瞳を閉じた。

冬馬と最後に重ねた唇は、あったかくて、初めてのキスを思い出す。いっそ時が止まってしまえばいい。

シンデレラの魔法のように、幸せな時間は瞬く間に過ぎて、時計の針と共に、私の心も解けていく。

冬馬だけを、愛おしく思う心は、少しずつ小さな粒になって、空から降る雪に戻っていく。


ーーーーもう二度と、私の心に積もらないように。冬馬の心に染み込んでいかないように。触れる前に、解けて消えていく。

「冬馬を愛してる」

きっと、私はオリオン座を見るたび思い出す。冬馬を愛して、愛してると言ってくれた夜を……

二人で未来を夢見た、オリオンの夜を私は忘れない。
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