オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
最終章 オリオンの夜に
「パパー」   

ポスンと、ベッドで寝ていた俺の腹の上に飛び乗ると、今年4歳になる流星(りゅうせい)が、口を尖らせた。

「痛ってーな」

俺に、よく似た切長の薄茶色の瞳をにんまり細めると、俺の腹の上でさらに飛び跳ねる。

「あそぼ」

「やだっつったら?」

「おじいちゃんに、いうからな」

流星が、鼻を持ち上げて偉そうに俺を見下ろす。俺は流星のおでこを小突いた。

「おまえな、誰に似たんだよっ!ジジイにはゆうなよ!」

「やだね、おじいちゃんにいいつけてやる」

流星は、幸之助に懐いている。流星が生まれた頃からだろうか。幸之助は変わった。暇さえあれば、忙しい仕事の合間を縫って、流星を呼んでは社長室で、プランレールを走らせたり、トミカーで遊んだり、目に入れても痛くないほどに、本当に可愛がってくれている。

まるで、幼い頃の俺たちとの時間を取り戻すように。

「ねぇ、ワルモノやって」

「ふざけんなよ、この間、せっかくやってやったのに、ヒーローライダーの真似して、この俺に、蹴り入れてきただろうが」  

「だって、ヒーローだもん。おじいちゃんとはできないし……もう、いいよ!パパがちっともオレとあそんでくれないっていうからな!」

俺が、目を細めると同時に、流星も切長の薄茶色の瞳をきゅっと細めて、口を尖らせた。

「ったく生意気だな。俺がジジイに怒られるだろうが。もし言ったら、もうおもちゃ買ってやらねぇかんな」

その時、寝室の扉が勢いよく開かれた。

「ちょっと冬馬っ、流星に余計な言葉ばっかり教えないでっ」
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