オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
俺と流星のやりとりが聞こえたんだろう。寝室に入ってくるなり、芽衣が口を尖らせた。

「なぁ……芽衣まで、口尖らせてんのかよ、そっくりだな」

ゆったりしたワンピースに身を包んだ芽衣が、呆れたように指先した。

「どうみても、冬馬そっくりじゃん」

流星が、茶髪を揺らすと薄茶色の瞳を、ニッと細めた。

「ほら、冬馬も起きて。今日でしょ?明香さん達が帰国するの」

「あー……空港でまで迎えに行くっていったのにさ、春樹が、俺たちの、住んでた家で待ち合わせしたいっていうからさー」 


ーーーーそう、4年ぶりだ。春樹と明香に会うのは。

「ごめんな、流星の子守り任せて」

春樹が、久しぶりに、俺達だけで、あの家で話したいというのだ。4年ぶりに兄妹で顔を突き合わせて、話すのも悪くないなと思った。

「全然、今日も幸之助おじ様とプランレールするみたいよ」

流星は、小さな青いリュックに、この間、幸之助に買ってもらったばかりの、ドクターオレンジと、かがやく、の車両を入れている。

芽衣が、俺の横に腰を下ろした。俺は芽衣の背中に手を回して、膨らんできたお腹をそっと撫でる。

「動く?」
芽衣がクスッと笑った。

「いま冬馬が触ったら蹴った」

「今から俺に蹴り入れるとか、芽衣似だな」

「次は女の子だよ、冬馬、甘やかしそう」

「女の扱いはうまいからな、俺」

唇を持ち上げた俺を見ながら、芽衣が、声を上げて笑う。
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