オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
「久しぶりだな、冬馬」
俺は、固く抱き締められた身体をそのままに、春樹の背中に左手を添えた。
「マジで、久しぶり。元気そうだな」
春樹は、体を離すと暫く、唇を持ち上げた俺の顔をじっと見ていた。
「……まあな、リハビリに時間かかったけど、今は後遺症もなく、元気いっぱいだよ、すぐ仕事も復帰できそうだ」
春樹が、右手を軽く曲げ伸ばしする。
「おい、少しは休めよ」
目を細めた俺を見ながら、春樹が、ふっと笑う。
「ありがとな、親父から聞いてた。ずっと専務の仕事も兼任してくれてたんだろ?」
「俺、適当なんで。お前が思ってる程、できてねーけどな」
「だろうな」
互いに目を合わせて、俺達は笑った。
「で?明香と星香は?」
「……あぁ、星香が長旅で疲れたのか……いま眠っててね」
「なるほどな」
(2階は、やけに静かだ。星香に付き添ってるうちに、明香も眠ってしまったのだろう)
「まぁ、座れよ」
春樹は、マグカップにインスタントのコーヒーを注ぐと、ダイニングテーブルに、ことんと置いた。
春樹は、俺の目の前に座ると、自分のマグカップに手をかけたまま、俺がコーヒーを飲む姿を黙って眺めている。
「何だよ?春樹?」