オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
宿泊施設といってもかなり簡素で小さい。
布団が2組置いてある部屋が1部屋と、ダブルベッドの置いてある、部屋が2部屋があるだけだ。今夜は俺たちの貸切らしい。
扉を開けてすぐのキーボックスから、部屋の番号が記載された簡素な鍵を篤が手に取った。
「あ、俺らはダブルベッドの部屋使うんで」
「じゃあ、ちょっと休憩したら明香、迎えにいくね」
篤が奈々を連れて右奥のダブルベッドが置いてある部屋に、入っていく。
「相変わらず仲いいね」
明香が小さく笑った。
「明香は?ベッドの部屋使うか?」
「え?」
学生時代は俺ら三兄妹で一つの部屋で雑魚寝してたが、大人になった今は違う。
来月プロポーズするんだと話していた春樹の顔がよぎった。
「冬馬は?」
「俺?別に布団の部屋でもどっちでもいいけど、どうかしたか?」
少しだけ間があって、明香がおずおずと口を開いた。
「えっと……冬馬と一緒の部屋はダメ、かな?」
一瞬、言葉出なかった。
「……お前な、何言って」
「だって……一人じゃ寝れないかも……」
俺は思わず腰に両手を当てて溜息を吐いた。
明香は、小さい頃は、俺か春樹が隣に居ないと眠れない子供だった。
「お前な、ガキかよ!家では一人で寝れてるだろが」
「……そうだけど、大学の時だって、此処に泊まるときは春樹と冬馬と一緒の部屋だったから……」
「今は違うだろ……。それに別に……俺、隣の部屋いるしさ」
いくらなんでも同じ部屋で明香と寝るのは俺には無理だと思った。
「でも……」
「そんなに一人で寝れるか心配なのかよ?」
明香が俯く。
「お前な……」
明香に未だにこんな子供みたいな所があることに驚いた。夜になれば、春樹の部屋によく行くのも、恋人なのだから当然だと思ってたが、そういうことも関係しているのかもしれないと思った。
明香は人一倍寂しがり屋だから。
「めんどくせぇな……じゃあ、来いよ」
明香の荷物と自分の荷物を持って、俺は布団が2組置いてある左端の部屋の扉を、黙って開けた。