オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
ーーーーパタパタと二階へと駆け上がって、渡り廊下をタンタンと渡る足音が聞こえてきて、今日も朝が来たと思い知らされる。
また明香と見たオリオン座の夢を俺は見ていた。いつも忘れかけた頃に見る夢。
木製扉がバタンと開いて、強引に毛布を捲られる。
「起きて!冬馬!」
少し不機嫌そうな声で妹の明香が俺を呼ぶ。
「何時?」
「七時すぎてる!いいかげん目覚ましかけてよ!」
俺は兄の春樹と違って目覚めしはかけない。低血圧で朝が弱いくせに。
理由は、誰にも言えない。今後も一生口に出しては言えない。
「雪は?」
「積もってない」
薄目を開けると明香が俺の顔をじっと覗き込んでいる。俺の唯一の好きな時間かもしれない。
俺だけを明香がその瞳に映すから。
「春樹は?」
「春樹なんて、もう食べて歯磨いてるよ」
「できる奴は違うな」
「早起きにできる、できない関係ないでしょ、ばか!」
「あのな、兄貴に向かって馬鹿はねーだろ」
起き上がる気配のない俺の肩を掴むと明香が、程よい力で俺をゆする。
「冬馬!遅刻しちゃうから!」
綺麗に伸ばされた胸までの黒髪が揺れる。
ひとつだけボタンの外された真っ白なシャツが俺をゆするために屈んだ分、明香の鎖骨あたりまでが見える。
僅かに見えた赤い痕は昨日春樹がつけたモノだろう。
「あんま屈むな、春樹に怒られんぞ」
目を細めた笑った俺を、明香が俺の頭を軽くたたいた。
「冬馬のばか」
「興味ねぇよ」
「春樹に言い付けるから」
「へぇ、いいの?俺に明香の小っせい胸、わざわざ朝から見せたこと」
「見せてない!もうっ、早くきてね、置いてくからね」
俺の肩から明香が手を離したときだった。
明香の左手手首を俺は思わず掴んだ。