オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
ーーーーコンコンとノックする音で、私は慌てて扉を振り返った。

扉を開けて、ひょっこり顔を出したのは奈々だった。

「あいつら遅すぎない?」

奈々が、目を細めると口を尖らせた。

「確かにね」

私は、ダウンジャケットを羽織ると、奈々と一緒に部屋をでて、扉を閉めた。

「あれ奈々、やけに着込んでるね」

奈々は、細身なのだが、ダウジャケットの中にさらにベストタイプのジャケットも着込んで、マフラーに足元には、レッグウォーマーまで履いている。

「あ、実はね……赤ちゃんできたの、まだ3ヶ月だから公にしてないんだけどね」

お腹に手をあてて、微笑む奈々が、幸せそうで私まで嬉しくなった。

「おめでとう、奈々いいお母さんになりそう」

「それより篤が心配、いまから服やらベビーカー買いたがってるからね、性別もわかんないのにね」 

まだ赤ちゃんだって、こんくらいだよ、と奈々が、指先でマルを作って笑った。

「篤くん、優しいし、奈々のこと大好きだから、赤ちゃんも溺愛しそう」 

奈々が、クスクスと猫みたいに、目を細めて笑った。

私も、いつか結婚したら、春樹の子供を産むのだろうか。

喫煙所目掛けて、並んで歩く奈々がふと、私を見た。

「……ねぇ、違ったらごめん」
「どしたの奈々?」

「春樹君のこと本当に、好き?」
「ど、うしたの急に」

奈々がすこしだけ、視線を泳がせた。

「うーん……大学の時から思ってたことあって……明香、春樹君の他に好きな子が居たんじゃないかなって、なんか今日の夜空みたら、ふと思出だしてさ、あの頃、明香、春樹君と付き合うの躊躇ってるように見えたから」 

「初めは……その……一緒に暮らしてるお兄ちゃんみたいな感覚だったから、すぐに返事できなかっただけで……今はそんなこと、ないよ」

ーーーーずっと冬馬が好きだった。でも、そんなこと誰にも言えない。結局大学生の時も親友の奈々にさえも言えなかった。


「でも春樹くんとこのまま付き合って結婚すること迷ってない?」

「え?迷ってなんて……」

「そう?車で聞いた時、何となくそんな気がしたから」 

春樹は、本当に私を大切にしてくれるから。  

結婚相手に私を選んでくれるのであれば、春樹と結婚するのが、1番いいんだって思ってた。冬馬の為にも。

奈々が、ふわりと笑う。
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