オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
ポツリポツリと降り出した雨はあっという間に本降りになった。
宿泊施設の入り口に辿り着いた時、丁度、篤くんと奈々も来た。
「おぉ、冬馬、雨凄えな」
篤くんが、雨に濡れた前髪を掻き上げた。
「こりゃ、暫く降るな」
冬馬が空を見上げた。
「さっさと風呂入って、今日は休みますかね、ちょっと奈々も身体冷えたみたいで心配で」
篤くんが、奈々の背中に触れた。
「奈々……あったかくして休んでね」
「ありがとね、明香また、明日ね」
二人の背中を見ながら、冬馬が扉の鍵を開けて私を先に中に入れた。
「明香、風邪ひくから、先風呂入れよ」
「あ、うん」
いつも同じ家で、お風呂なんて当たり前に入ってるくせに、部屋に二人きりだからなのかドキンとした。
私がシャワー室から出ると、セーターを脱いだTシャツ姿の冬馬が入れ替わりで入っていく。
冬馬のシャワーを浴びる音に何故だか緊張してくる。
ふと見ると、スマホにラインのメッセージがきていた、春樹からだ。
『オリオン座見えたか?こっちは会議終わってホテル着いたとこ。明香に会いたい』
『お仕事お疲れ様。オリオン座も星雲も見れれて綺麗だったよ、明日かえるからね』
私も、会いたいと入れるべきだったのかも知れない。でも、今夜だけは、冬馬のことだけを考えたかった。
シャワー室から出てくると茶色の髪をタオルで拭き上げながら、冬馬がテーブルに腰かけた。
冷蔵庫からミネラルウォーター を、取り出すと備え付けのグラスに注いで、私の前にも、ことんと置いた。
「ちゃんと、あったまった?」
「うん、ありがとう」
「綺麗だったな、オリオン」
冬馬がグラスの水を飲み干すと、タバコに火をつけた。
「冬馬、タバコ禁止でしょ?」
「お前が言わなきゃバレねーだろ」
意地悪く笑うと、冬馬が白い煙を私にかからないように吐き出した。
「……すごく綺麗だった。……一生忘れない」
「大袈裟だな、また春樹と見に行けばいいだろ」
「ねぇ……私、春樹と……結婚してもいいのかな」
「もうマリッジブルーかよ」
冬馬がタバコを口に咥えると、私のおでこをツンと突いた。
「俺は明香の幸せだけを願ってるから。……春樹は、お前を幸せにしてくれるよ」
「幸せにしてもらうだけでいいのかな?」
ただ側にいるだけで幸せだと感じる人と結婚して……、奈々の言葉を思い出した。
「明香は何も心配すんな」
冬馬がふっと笑った。
「春樹がいるから……もう俺いなくても大丈夫だな、帰ったら家探さねーとな」
頭をポンと撫でられた掌があったかくて、どうしようとなく、心がぎゅっとなる。
「冬馬」
「どした?」
「やっぱり……私……どうしても、冬馬に言わなきゃいけないことが……あるの」
タバコの火を消した冬馬が立ちあがろうとして、私の方に身体を向けると、すぐに難しい顔をした。
「そうじゃなきゃ、春樹と結婚できない」
「明香……約束しただろ」
「わかってる……それでもね、それでも……」
さっき、冬馬が家を出ると言ったこともショックだったのかもしれない。もう心の蓋は限界だった。
涙が勝手に転がっていく。
「……どうして……ダメなの?」
「明香、言うな」
溢れて止まらない涙を、私は雑に拭った。
泣いたら話せなくなるから。
ーーーー「約束しただろ?あの日」
宿泊施設の入り口に辿り着いた時、丁度、篤くんと奈々も来た。
「おぉ、冬馬、雨凄えな」
篤くんが、雨に濡れた前髪を掻き上げた。
「こりゃ、暫く降るな」
冬馬が空を見上げた。
「さっさと風呂入って、今日は休みますかね、ちょっと奈々も身体冷えたみたいで心配で」
篤くんが、奈々の背中に触れた。
「奈々……あったかくして休んでね」
「ありがとね、明香また、明日ね」
二人の背中を見ながら、冬馬が扉の鍵を開けて私を先に中に入れた。
「明香、風邪ひくから、先風呂入れよ」
「あ、うん」
いつも同じ家で、お風呂なんて当たり前に入ってるくせに、部屋に二人きりだからなのかドキンとした。
私がシャワー室から出ると、セーターを脱いだTシャツ姿の冬馬が入れ替わりで入っていく。
冬馬のシャワーを浴びる音に何故だか緊張してくる。
ふと見ると、スマホにラインのメッセージがきていた、春樹からだ。
『オリオン座見えたか?こっちは会議終わってホテル着いたとこ。明香に会いたい』
『お仕事お疲れ様。オリオン座も星雲も見れれて綺麗だったよ、明日かえるからね』
私も、会いたいと入れるべきだったのかも知れない。でも、今夜だけは、冬馬のことだけを考えたかった。
シャワー室から出てくると茶色の髪をタオルで拭き上げながら、冬馬がテーブルに腰かけた。
冷蔵庫からミネラルウォーター を、取り出すと備え付けのグラスに注いで、私の前にも、ことんと置いた。
「ちゃんと、あったまった?」
「うん、ありがとう」
「綺麗だったな、オリオン」
冬馬がグラスの水を飲み干すと、タバコに火をつけた。
「冬馬、タバコ禁止でしょ?」
「お前が言わなきゃバレねーだろ」
意地悪く笑うと、冬馬が白い煙を私にかからないように吐き出した。
「……すごく綺麗だった。……一生忘れない」
「大袈裟だな、また春樹と見に行けばいいだろ」
「ねぇ……私、春樹と……結婚してもいいのかな」
「もうマリッジブルーかよ」
冬馬がタバコを口に咥えると、私のおでこをツンと突いた。
「俺は明香の幸せだけを願ってるから。……春樹は、お前を幸せにしてくれるよ」
「幸せにしてもらうだけでいいのかな?」
ただ側にいるだけで幸せだと感じる人と結婚して……、奈々の言葉を思い出した。
「明香は何も心配すんな」
冬馬がふっと笑った。
「春樹がいるから……もう俺いなくても大丈夫だな、帰ったら家探さねーとな」
頭をポンと撫でられた掌があったかくて、どうしようとなく、心がぎゅっとなる。
「冬馬」
「どした?」
「やっぱり……私……どうしても、冬馬に言わなきゃいけないことが……あるの」
タバコの火を消した冬馬が立ちあがろうとして、私の方に身体を向けると、すぐに難しい顔をした。
「そうじゃなきゃ、春樹と結婚できない」
「明香……約束しただろ」
「わかってる……それでもね、それでも……」
さっき、冬馬が家を出ると言ったこともショックだったのかもしれない。もう心の蓋は限界だった。
涙が勝手に転がっていく。
「……どうして……ダメなの?」
「明香、言うな」
溢れて止まらない涙を、私は雑に拭った。
泣いたら話せなくなるから。
ーーーー「約束しただろ?あの日」