オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜

冬馬の部屋の扉を閉めて、私はトントンと木製階段を降りながら、冬馬の指先が触れた左手の絆創膏を眺めていた。

朝、うっかり包丁が当たって切ってしまった左手の人差し指の絆創膏からはまだ血が滲んでいた。

冬馬の薄茶色の瞳に見つめられると居心地が悪い。

あの日のことを未だに思い出して苦しくなるから。


リビングのテーブルの上には大学の天文サークルの一泊二日の同窓会の案内状が届いていた。

私達は同じ大学、同じサークルに入っていた。春樹は同窓会には、出張で行けないと話していた、欠席で返事をしよう。冬馬と二人では行けない。

私と冬馬は母親は同じだが父親が違う。

冬馬は私のことにすぐ気づく。それは、半分だけど血が繋がってる兄だからなのだから当然なのかもしれないけれど。

それ以上に、あの日の事……決して言ってはいけない言葉。

私がどうしても忘れられない想いを冬馬は分かっているからかもしれない。


「おはよ」

ぼんやりとそんなことを、思い出しながら、キッチンで冬馬の目玉焼きを作っていると、するりと私の首に巻き付くように、後ろから抱きしめられる。


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