オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
自室のベッドに転がりながら、窓辺から、見える星空を俺は眺めていた。

(……また泣かせたな)  

明香にはあらかじめ、俺が家をでること、結婚のことを伝えておきたかった。

春樹の前で話した時に、明香に泣かれたら困るから。
さっき、3人での夕食で話した時は、明香も幾分か落ち着いていたようで安心した。  

『そうなんだ、急でびっくりしちゃった……』

と無理して笑う明香を見ると、やっぱり早く家を出なければと思った。

このままじゃ、俺も明香もどっちも駄目になりそうだ。

明香の隣で俺の話を聞いていた春樹は、やけに考え込むような顔をしていた。


ーーーーコンコンと珍しくドアが、ノックされる。

俺が、返事するより先に、ビール缶を抱えた春樹が、部屋に入ってきた。

春樹が、訪ねてくるのはかなり珍しい。
自分の鼓動が早くなるのを感じた。

「珍しいな」

平静を装って、ベッドから起き上がった俺に、春樹が冷えたビールを手渡した。

そして、俺のベッドに上がると胡座(あぐら)をかいた。

「無断で早退しただろ?始末書書けよ」

唇を持ち上げながら、春樹がプルタブを音を立てて開ける。

「適当に春樹が承認印押しとけよ」 

「押さないよ、ちゃんと反省してもらわないとな」

「なんだよ、ちゃんとって」

缶同士をぶつけると、俺たちはそれぞれがビールを流し込んだ。

春樹が何故、俺の部屋にきたのか、明香との、あの夜のことが頭をよぎった。

「で、何か用?」
「さっき電話で、詳しく未央から聞いた」

夕食の席では、家を出ることと、結婚が決まったことを簡単に話しただけだった。春樹の顔が険しかったのは、政略結婚だと、薄々感じていたからだろう。
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