オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
「大体……冬馬の幸せはどうなるんだよ」

春樹が、ビールの缶をくしゃりと潰した。

「春樹と明香が幸せなのが、俺の幸せなんだけど?」

ふっと笑った俺をみて、春樹は小さくため息を、吐き出した。

「……明日、親父とは、話す。……あと、今度の食事でプロポーズする。明香のことは必ず幸せにするから、約束するよ」 

「春樹と約束すんの初めてじゃね?」

あえて茶化すように言った、俺の手から空のビール缶を取り上げると、春樹は、おやすみと言って部屋から出ていく。

ーーーー春樹が、扉を閉めようとした時だった。

「なぁ、冬馬、この間の同窓会だけど、明香と同じ部屋に泊まったのか?」  

「……いや明香が、一人じゃ寝れないって言ったけど、さすがにな。……別々の部屋に泊まったけど」 

一瞬迷った。どう答えるべきなのか。明香にも同じことを聞いたのだろうか?俺は、明香が答えそうな方を、咄嗟に答えていた。

「そうか……明香、家では未だに一人で寝るの嫌がるんだよ」

春樹のいつもの返事に、安堵する最低な自分がいる。

「みたいだな、春樹も大変だな」

「俺は明香と寝たいだけ」

春樹は、それだけ言うとドアを閉めて出て行った。俺は閉められたドアを暫く眺めていた。

ーーーー何故だろうか。嫌な胸騒ぎがした。


< 59 / 201 >

この作品をシェア

pagetop