オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
「ふぅ……」
私は、午前の生徒さん達が帰った、教室でペットボトルのミネラルウォーター で白い錠剤を一つ口に含んだ。
生理痛が重いのだ。でも正直、今朝生理がきて、ほっとした。
春樹はいつも、避妊してくれるが、あの夜、冬馬が避妊していたのかどうか、私は意識が混濁していて分からなかった。
冬馬のことだから、ちゃんとしてくれていると信じていても、あの夜は、お互い冷静ではなかったから、やっぱり少し心配だった。
教室の階段を降りたところで肩を抱かれる。
「お疲れ様」
「春樹、ごめんね、待った?」
「全然」
するりと春樹が私の頬に手を伸ばした。
「大丈夫か?あんま顔色がよくない」
「……大丈夫だよ、お腹減った」
見上げた春樹が、私を見ながら優しく笑った。
「いつものイタリアンでいい?」
松原工業の本社ビルの隣の筋を、入ってすぐのところにあるイタリアン店で、私と春樹は時々お昼を一緒に食べにきていた。
「うん、パスタたべたい」
「好きだな、あそこのクリームパスタ」
「エレベーターでばったり会ってさ、冬馬と婚約者の方もいるから」
心臓を針でさされたようにズキンと痛んだ。
「あ、そうなんだ。緊張するな……」
なんてことないように、返事したものの、足取りは途端に重たくなる。
「大丈夫だよ、俺も居るし」
お店の入り口の木製扉を春樹が開けると、店の右奥の四人がけのテーブル席に、冬馬の後ろ姿が見えた。
その隣にーーーーブルーのワンピース姿の女性が見えた。