オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
見慣れない真っ白な天井と、白いカーテンが見える。
すぐに薄茶色の瞳が、私を覗き込んだ。
「気がついた?」
私のおでこに、手を当てると、すぐにするりと離した。
「熱はないな。もうちょいで点滴終わるから」
「……冬馬、私……」
見渡す限り、此処は、病院で、私と冬馬の二人きりだ。
コンコンとノックの音がして、どこかで見たことのある栗色の髪の女性が入ってきた。
「あ、気づいたんだ」
「未央、どうだった?」
未央、という名前に覚えがあった。
彼女は、一枚の紙を、冬馬に差し出した。
「パパから伝言。これ検査結果。血液検査の異常はないから、貧血だろうって。あとは睡眠をしっかり取って、栄養のあるもの食べるようにって」
淡々とした口調で話すと、私をじっと見つめた。
「覚えてる?久しぶり」
「あ、えと、未央さん……?」
「そ、春樹の元カノで、今は社長と春樹の秘書やってんの、ちなみに幸之助おじ様は、私と春樹を結婚させてがってる」
未央の瞳は嫌悪感に満ちていた。
「そのへんにしとけよな」
冬馬が低い声で、未央の肩を掴むと、睨みつけた。
「俺から春樹に言われてもいいなら、続けろよ」
「冬馬も春樹も、この子のことになると目の色変えるのね、あ、これ血液検査のコピー、春樹に頼まれてたから」
冬馬の手を振り払うと、未央は病室を後にした。
「冬馬、あの」
「ごめんな。急ぎで明香診てほしくて、春樹が、未央経由で、ここの病院の院長やってる未央の父親に連絡いれて、無理矢理診てもらったんだ」
「あ……そうだったんだ。あと、未央さんと春樹のこと……」
ーーーー知らなかった。春樹と未央さんに結婚の話が持ち上がっていたなんて。
「未央が未練たらたらなだけ。春樹はお前としか結婚しねぇから、気にすんな」
冬馬は、当たり前みたいに、私の頭をくしゃっと撫でた。安心させるように。