オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
★「……兄妹で……そんな気持ち抱くなんてさ、気持ち悪いよな……」

自嘲気味に笑った、俺を、見ながら、芽衣が、首を振った。

「人を好きになるのに理由ないでしょ?……
私ね……本気になんかなるつもりなんかなかったのに、……冬馬が……好きになっちゃった……」

涙目になりながら、笑う芽衣が、俺自身と重なって、思わず、芽衣の頬に触れていた。 

「だから……冬馬、側にいてよ」

泣きそうな顔で、芽衣は笑う。

「……俺なんか……やめとけよ」

どれだけ、大事にしてやれるかも分からない。

想いに応えてやれるかも分からない。

今の寂しいだけの、俺の不確かな思いで、芽衣の側で、俺に何ができるだろうか。

芽衣を傷つけるだけじゃないのか。

芽衣の大きな瞳から、ついに溢れた、涙を(すく)ってやる。

「ねぇ、冬馬。寂しいと寂しいを、足したら何に、なると、思う?」

「……なんだよ、それ」

芽衣は、真っ直ぐに俺を見つめた。

「答えは、『寄り添う』だよ」

僅かに触れる程度に重ねられた、それが芽衣の唇だと気づく。

「冬馬の寂しいは、私が、引き受けてあげる」

苦しそうに芽衣は笑う。

「だから、私が、何処(どこ)にもいかないように、離さないで……」 

「芽衣……」

触れるだけだった唇の熱は、少しずつ互いの寂しさを折り重ねるように、深くなっていく。芽衣のワンピースのシャツのボタンを外せば、穏やかな、月明かりに真っ白な身体が、浮き上がった。

「……綺麗だな」

「冬馬、優しくして……」

俺はそのまま、芽衣の白く細い、首筋から順番に口付けていく。

芽衣が、俺のワイシャツを脱がしていくうちに、俺は、ブラジャーのホックを外して、ショーツを脱がすと、芽衣の膝を割った。

芽衣の中心を指先で、ゆっくり触れていく。

「ンっ…………とう、ま」
「芽衣……力抜いて」

芽衣は、思ってた以上に身体つきが華奢だ。強く抱きしめたら折れてしまいそうほどに。唇で胸の膨らみに触れながら、ゆっくり指の数を増やしていく。触れるたびに、芽衣の身体が、何度も跳ねた。

「……好き……だ、よっ」

「優しくするから……」

芽衣が、一生懸命手を伸ばして、俺の首に手を回す。俺はそのまま、一気に芽衣の中に入った。

互いの熱が混じり合って、凍りついていた心まで温もりを感じていく。それが、寂しさを(くる)むだけの温もりだとしても。

そのまま、何度も体温を交換しながら、俺達は、一つに重なった。

ゆっくり芽衣の身体から離れた、俺はすぐに、気づいた。

「……芽衣?……何で言わなかった?」

呼吸を整えた芽衣が、俺の腕に小さな頭を乗せると、俺の瞳をじっと見た。

「初めてだって言ったら、冬馬、抱いてくれないと思ったから。私の……初めては、好きな人が良かったの」

まさか芽衣が、初めてだとは思わなかった。 

「……痛かっただろ?」
「……大丈夫だよ」

芽衣は、小さく笑うと、俺の頬に触れる。
俺は、芽衣の髪を撫でながら、芽衣の瞳を見つめた。

「……もっと……自分のこと大事にしろよ……」

「冬馬が、大事にしてよ。好きになってくれなくてもいいから」

また今にも、泣き出しそうな顔をした芽衣を、俺は、キツく抱きしめていた。

「……泣かさないようにする」

今の俺には、そんな事位しか、芽衣に約束してやれない。

「うん……約束ね」

芽衣は、それだけ呟くと、俺に、しがみつくようにして瞳を閉じた。

芽衣の体温が、じんとあたたかくて、ひどく安心する。俺は、さっきまで着ていた自分のワイシャツをベッドの脇に見つけて手を伸ばすと、芽衣を(くる)んでから、布団を被せた。

明香とは違う、甘い匂いのする芽衣の髪をすくように撫でる。

こんな俺が、純粋な眼差しを向けてくれる、芽衣と結婚していいのだろうか。

聴こえてくる、芽衣の静かな呼吸音に、重ねるように俺も瞳を閉じた。
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