オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
リビングの時計を見れば、18時を既に回っている。

そろそろ、春樹が、帰ってくる時間だ。

今日は、メニューに迷って、結局、春樹が好きなハンバーグを作った。朝、出勤する時の春樹は、拍子抜けする位にいつも通りで、それが逆に私は、不安になった。

お皿にサラダと一緒に、ちょうど盛り付け終わったと同時に、玄関扉が開いた。

「おかえりなさい」
「ただいま」

春樹は、靴を脱ぐと、そのまま玄関先で、エプロン姿の私を、抱きしめた。

「いい匂い」 

「あ、ハンバーグだよ」

「違うよ、両方」

耳元で囁くように言われて、思わず赤くなった私を、見ながら、春樹は、そのまま唇を重ねた。

「ンッ……春、樹?」

そのまま、春樹は、スーツのジャケットをソファーに脱ぎ捨てると、私をあっという間に、横抱きにして、階段を登り始めた。 

それが、何を意味するのかすぐに分かった。

「待って、春樹、お風呂入ってないっ」

「ハンバーグより、先に食べたいものあるから」

春樹は、自室の電気を点けずに、私をそっとベッドに下ろした。そして、雑にネクタイを緩めると、ゆっくりとキスを落とす。

「ま、待って、春樹。せめて、シャワー浴びさせて」

春樹は、首筋に口付けながら、私の声が聞こえていないかのように、エプロンを器用に外す。

「春樹?」

春樹の顔が苦しそうで、悲しそうな瞳をしていた。春樹の頬に触れる。

「……冬馬と……何かあった?」 

昨日のことが、頭を掠めて、思わずそう言葉に出していた。

「ないよ」
春樹はにこりと笑った。

私を安心させるのように。

ーーーーでも、きっと違う。春樹は冬馬と何か話した、それはきっと、私と冬馬のこと……。

「でも……俺と結婚するんだから、冬馬とは暫く会わないで」

「え?」

「俺だって、やきもち妬くんだよ、明香に、俺だけを見てほしい」

春樹は、私のセーターを捲り上げて、スカートの中に手を入れる。

「春樹、どうしたの?……お願い、待って…」

「待てない。俺だけ見てよ」
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