オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
「何で謝るの?明香が謝ることなんて一つもないよ」

「だって……」 
「大丈夫だから」

春樹は、私の言葉を遮ると、優しく頭を撫でた。

思わずこぼれた涙を、春樹が唇で舐めた。

「しょっぱいな」 

春樹は、知らないフリをしてくれている。

私の冬馬への想いを分かってて、それでも、私といることを望んでくれている春樹に、私は甘えていいのだろうか。

私は、冬馬に抱かれた。血の繋がった兄に恋心を抱いて、あの夜、抱かれることを望んだ。
春樹を裏切って、春樹じゃなくて、冬馬だけを欲したのに。

春樹が、私の左手の薬指に嵌められた、指輪に唇を寄せた。

「絶対幸せにする。……だから明香は、何も心配しなくていいから……大丈夫だよ」

春樹のキスは、いつものように優しくて、私は春樹の優しさに、寄りかかることしか出来なかった。

ーーーー苦しさも恋しさも切なさも、もう全部忘れてしまいたくて。

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