オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
ーーーー血液型の欄には、『AB型』の記載。
俺と冬馬の血液型はO型だ。俺の母親だった松原由希もO型。松原幸之助もO型。
そして、幸之助の愛人だった平山理恵子もO型だった筈だ。
冬馬を認知する際に、DNA鑑定をしたときの記録を、幸之助から見せてもらったことがある。
うろ覚えだが、俺の記憶が合っていれば、平山理恵子は、O型で間違いない筈だ。
あの時のDNA鑑定記録の紙は、幸之助が持っているのだろうか?
ちなみに明香に関しては、DNA鑑定もしていないし、家に保管している母子手帳には、血液型は、不明で空欄だった。
新生児は、血液が薄く、出生時に不明なことは、よくあることらしいし、気にしたこともなかった。
明香がAB型というのはどういうことだ?
母親がO型の場合、相手がどの血液型であっても、AB型だけは有り得ない。
明香の母親は、本当に平山理恵子なのだろうか?
仮に違うのだとすると、冬馬と明香は血が繋がって……ない?
思わず口を覆う。
ーーーーどういうことだ?
「くッ…………」
突然、頭をハンマーで殴られたような激痛に襲われて、俺は頭を抱えてしゃがみ込んだ。脳の中を何かで突き刺さしていくように何度も激痛が走る。
(何だ?……この間の頭痛とよく似てるが、もっと痛みがキツイ)
血液が、逆流していくように動悸がして、呼吸が、苦しい。
「はぁっ……はっ……」
もうこれ以上はと思う寸前だった。不思議なほどに頭痛がすっと消えた。
「……何だ?」
頭を軽く振ったり、触れても、勿論痛みは、ない。そういえば、未央から言われていたのに、人間ドックの検査結果を見ていなかったのを思い出した。
何だろう。なんとも言えない不安が俺を襲う。
すぐそばからは、いつもの明香の寝顔がこちらを見ていた。
そっと、明香の頬に触れる。長い睫毛が揺れて、頬から伝わる優しい温度に、ほっとする。俺が、必ず、明香を幸せにするんだ。例えどんな真実があったとしても、明香だけは、誰にも渡さない。
俺は、パソコンのメールを開くと、夜遅くに失礼だと承知の上で、ある人物にメールを送信した。
できるだけ、早く会っておく必要がありそうだ。
俺は、明香の呼吸音を聞きながら、3人で映っている雪だるまの写真を月明かりの中、静かに眺めた。