オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
第6章 別離とそれぞれの決意
「春樹、起きて」
私と一緒に眠る時でも、春樹は、必ず目覚しをかけるのに、春樹は、珍しく目覚めをかけてなかった。
昨日、春樹は夜更かしでもしたのだろうか?
肩をそっと揺らすけど、珍しく寝起きが悪い。
「春樹?」
体調でも悪いのかと、おでこに手を当てると、そのまま、手首に掴まれて、春樹に覆いかぶさるような姿勢になった。
「お、起きてたの?」
「まあね、明香に何度も起こしてほしくて」
私の頬を、するりと撫でながら、春樹はふわりと笑った。
いつも通りの春樹の優しい笑顔に、ほっとする私は、なんて狡くて、罪深いんだろう。
「今日も可愛いな」
瞳を逸らさず言われた言葉に、思わず顔が熱くなった。
「結婚前の新婚気分も楽しもうな」
春樹は起き上がりながら、私の頭を撫でると、パソコンをつける。
春樹の日課だ。毎朝必ず、パソコンのメールを確認してから出勤する。
マウスを操作する、春樹の右手の甲が赤く内出血みたいになっていることに気づいた。
春樹が、怪我をするのは珍しい。小さい頃から怪我をするのは、いつも冬馬だったから。
「春樹?手、ぶつけたの?ごめん、昨日は気づかなかった」
「……あ、ドアに少しね、全然大丈夫だよ。先に降りてて、メール見たら降りるから」
春樹は、私の目を見ずにそう言った。いつもの春樹と少し違うと感じたのは何故だろう。
それにドアに手をぶつけて、あそこまで内出血になるだろうか?
「フレンチトーストと、サラダ作ってあるからね」
「ありがとう」
春樹の横を通り過ぎる時、パソコンの画面を見た春樹の視線が一瞬固まった。
「どうしたの?何か会社であった?」
「……あ、いや、急な要件が入ってたから驚いただけだよ。……今日は会社には行かずに外勤になりそうだ。お昼一緒に食べられないけど、ごめん」
「ううん、大丈夫だよ」
「少し遅くなりそうだから、夜は先食べてて」
「分かった、お仕事、無理しないでね」
春樹は、目を細めて頷くと、視線をパソコンの画面へと戻した。