オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
私は、先にリビングに降りると、二人分並べた朝ご飯を眺めながら、いつも冬馬の座ってた席に視線を向けた。

冬馬は、左利きだから、必ず春樹の左側になるように座っていた。

いつも三人分作ってた料理も、二人分作ることにようやく慣れていた。こうやって、冬馬の居ない生活に慣れて、春樹との生活が当たり前になっていくんだろう。

私のスマホがメッセージを告げる音がする。

朝に誰かから、連絡が来ることない私は、急いで確認する。そして小さく溜息を吐き出した。

何て馬鹿なんだろう。冬馬な訳ないのに、ほんの少しだけ、冬馬だったらと期待した自分がいた。


「美味しそうだな」

濃紺のスーツに、チェックのネクタイを締めた春樹が階段を降りてくると、私の前に座った。

「あ、春樹、手みせて」

私は、あらかじめ出しておいた、救急箱の中から包帯を取り出して、二重まきにしてテープで止めた。

「過保護だな」

「春樹だって」

「ありがとう」

春樹は、触れるだけのキスを落とした。見上げた春樹は、優しく笑ってるのに、なぜか春樹の瞳が、不安そうに見えた。

朝ご飯を食べ終わると、洗い物を始めた私に、春樹が聞いた。

「あれ?明香、今日休み?」

「あ、うん。さっき、生徒さんから連絡あってね、都合つかなくなったから、振替レッスンを後日することになったの」

「そっか。……じゃあこれでも見ておいて」

少しだけ照れながら春樹が、鞄から取り出したのは、結婚式場や結婚に関する様々な、情報が掲載されている雑誌だった。

春樹が私のために、本屋さんで、恥ずかしそうに買う姿を想像して、私がクスッと笑うと、春樹が、笑うなよ、と頬を染めた。

「いってらっしゃい」

春樹は、私の唇をに触れるだけのキスを落とすといつも通りに出て行った。
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