オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
ーーーー目が覚めると、隣に芽衣は居なかった。
慌てて起き上がった俺に、気づいた芽衣が、リビングから、走ってきた。
「冬馬起きた?ご飯できてるよ、食べよ」
あっ、というと、芽衣がリビングに何かを取りに行く。戻ってきた芽衣が抱えていたのは、救急箱だった。
「座って」
「別に……大したことじゃないから」
ベッドに座り直して、そっぽを向いた俺に、芽衣は無理やり、消毒液を湿らせたガーゼを、口元に当てていく。
「……痛って……」
「やっぱ痛いんじゃん。まだ少し腫れてるから、ご飯食べたら、後で冷やしとこ?」
慣れた手つきで、俺の腫れた口元に絆創膏を貼り付けた。
芽衣は聞かない。
昨日、俺に何があったのか。
何で、芽衣を抱いたのか。
俺が、芽衣を誰の代わりにしたのか。
テーブルに座ると、野菜が沢山入ったお粥が置いてある。
「俺、病人じゃねぇんだけど?」
「口大きく開けなくても食べれるでしょ」
思わず、すぐに返事が出来なかった俺を見ながら、
「惚れんなよっ」
とニコッと笑った。
俺は、芽衣の手首を掴むと抱き寄せた。驚いた芽衣が目を丸くして俺を見上げる。
「冬馬?」
「ほんと、俺には勿体ないな」
俺から、重ねた唇に、芽衣が、真っ赤になりながら、早く食べてと、そっぽを向く。
芽衣が居なかったら、俺はどうなってただろうか。こんな俺のそばに居ると言ってくれる芽衣を、大切にしたい。たとえ、明香を完全に忘れる事ができなかったとしてもだ。
大切にして泣かせない。
「……婚約指輪、買ってやるよ。……うんと高いやつな」
お粥を口に放り込んだ俺を見ながら、芽衣が嬉しそうに頷いた。