もうダメだった。
そう思えてしまうと胸が少し痛くなった。
私ばかり大好きだったみたいだ。
「お部屋にご案内いたします」
私は感情がなるべく表に出ないようににっこりと笑うと結衣からキャリーバッグを奪ってさっさと歩き始めた。
「…」
例え結衣だとしてもお客様である以上、雑な対応はできない。
キャリーバッグだけ奪ってフロントに置き去りなんてあってはならない。
結衣を置いて歩き出したのは私だったが、そんな責任感を感じで私はちらりと後ろを確認した。
結衣はちゃんとついて来ているだろうか?
だが、そんな考えは不要だった。
結衣は何故か嬉しそうな顔をして私の後ろをきちんとついて歩いて来ていたからだ。
私が結衣を気にしている素振りに気づくと結衣は「莉子?」とさらに嬉しそうに笑っていた。
…脳内お花畑かよ。
そう思えるのに同時に可愛いと思えてしまうのだから私も十分お花畑なのだと思えてしまった。