もうダメだった。
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「久しぶりで嬉しいのはわかるけど人目があるところであの態度はどうかと思うよ?」
結衣を客室に案内した後、私は豪華なソファに1人で腰掛ける結衣に向かって、先程の不満をぶつけていた。
もちろんコンシェルジュである私はソファに座ることなく、結衣が座るソファの横に立っている状態だ。
「アナタはモデルで芸能人でしょ?人気商売だからスキャンダルはご法度だと思うけど?」
当の本人ではない私がこんなにも気にしているのに、当の本人である結衣は未だに何故かにこにこしていて、全く危機感がない。
芸能人としての自覚がないのか?と思えるくらいにはものすごく呑気に見える。
「しかもスキャンダルの相手が一般人で元恋人だったなんてバレたらとんでもない騒ぎに…」
そこまで口にして私は固まった。
そうだ。
結衣のファンはめちゃくちゃ過激で有名でもあるのだった。
いつか結衣がよくモデルの仕事をしていた女の子のモデルが、SNSに結衣との関係を匂わせた時なんて炎上どころでは済まされなかった。
あの女の子は最終的に芸能界引退まで追い込まれていた。
またある週刊雑誌に結衣のスキャンダルが報道された時は、相手の女の子の個人情報が瞬く間にSNS上で拡散され、その女の子は普通の生活ができなくなった。
嘘か本当かわからないが自殺未遂まで追い込まれたとか。
またある女優さんは結衣と映画で濃厚なラブシーンを撮影した、というだけで結衣のファンの子から殺害予告を受け、その予告通り刺された。
幸い大事には至らなかったようだが、あんなにもドラマや映画に出演していたのに、その後は芸能界ではあまり目立った活動が見られない。
事実上の活動休止状態まで追い込まれている。