もうダメだった。





*****



「莉子さん」



フロントに戻ると恨めしそうにこちらを見ている綾音が私を待っていた。



「詳しく!教えてください!結衣くんとの関係を!」



綾音が今にも泣きそうな声でそう言うものだから、綾音以外のスタッフも表向きは特に気にしていない様子だったが、気にしている素振りを見せ始めた。

静かに注目されているのがわかる。


やっぱり追求されるとは思っていたけどまさかこんなにもすぐにしかも皆さんの前で追求されるとは…



「結衣くんと莉子さんの関係が気になって仕事が手につかないんですよぉ!」と言っている綾音の姿を見て申し訳ない気持ちになった。

そんな関係ではないのに今まで不安な気持ちでいっぱいだったんだよね。



「ごめんね、綾音。綾音の体調は大丈夫なの?」



結衣との関係を訂正する前にまずは心配していた綾音の体調を聞く。

すると綾音は「大丈夫じゃないですよー!」とついに泣き出してしまった。


本当にごめんない。



「わ、私、本当に結衣くんが大好きで!インフルエンサー時代から推していて!いろいろなスキャンダルはあったけど所詮本人発信じゃないからって思っていたのに!あんな、あんなところ見せられたらぁ!」



人目も気にせずわんわん泣き出した綾音に私はさすがに驚いた。

本当に大好きだという感情が伝わってくる。


このままここでずっと綾音を泣かせるわけにはいかない。



私は近くにいたスタッフと話し合って、少しだけフロントから綾音と一緒に離れることにした。






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