もうダメだった。
3.お願いだよ
*****
「あ、やっと来てくれた。おはよ、莉子」
「…おはよう」
支配人室で支配人の話を聞いた後、支配人からすぐに結衣の元へ向かうように言われので、私は早速結衣の客室にやって来ていた。
そして客室へ向かえば昨日と同じように嬉しそうに笑う結衣が私を待っていた。
「朝食はまだだよね?一緒に食べよう?」と結衣に言われて窓際の椅子へ案内される。
大きな窓際のすぐ横に置かれている机の上には我がホテル自慢の朝食がずらりと並べられていた。
結衣の言う通り私はまだ朝食を食べていない。
どうせここでしか生活ができないので私は結衣と朝食を食べることにした。
「…何で大金払ってまで私を専属に指名したの?」
朝食に手をつけながら、私と同じように朝食を食べている結衣にとりあえず今のこの状況の説明を求めてみる。
「ん?1ヶ月も滞在するんだからどうせなら気心知れている人に頼りたいでしょ?」
すると、結衣は不思議そうにそう言いながら私を見た。
「…まあ、そうかな」
そんな結衣を私は変なものを見るような目で見た。
…結衣の気持ちもわかるけど1000万の価値がそこにあるか?
モデルになって芸能人として成功して金持ちになった結衣は私とは随分金銭感覚が違うようだ。
「契約内容見たけど私もこの部屋で生活するんだよね?」
「うん」
「生活必需品とかないからせめて家に取りに帰りたいんだけど」
「その必要はないよ」
「え?」
その必要はない?
にっこりと笑っている結衣の言おうとしていることがいまいちわからず、首を傾げる。
「莉子に必要なものは全部俺が用意しておいたから。服も下着も化粧品もぜーんぶ。足りないものは買い足せばいいし、何も心配いらないよ」
「…」
まじか。
少しだけ誇らしげに笑っている結衣に私は思わず絶句してしまった。